数ヶ月前、クリープハイプの新アルバム「世界観」のジャケット及び曲目を見たときのバカ正直な感想としてはただただ「なんじゃこれ」だった。ジャケットはダサいし曲はなんか今までに無いようなタイトルが多いし…「TRUE LOVE」って何だよ!頭の片隅で「このまま解散すんのかな…」みたいな邪念も頭をよぎったのもぶっちゃけ事実、だったんだけど…
…まあ杞憂でしたね、うん、このアルバム、最高傑作だと思う。今までのクリープハイプの歩みを全部受け止めた上で新しいクリープハイプを創り上げようとする姿勢、決意にただただ脱帽した。発売日は合宿中だったからずっとうずうずしてて、合宿が終わった瞬間疲れた体を引きずり買いに行った。駅のコインロッカー代の500円なんてくれてやんよ!
というわけで今回も全曲レビューという形でやります。ネタバレが嫌な人は気をつけてね!
M1:手
メジャー1stに入ってる人気曲「手と手」の続編らしい。『「手と手」が離れて「手」になった』という悲しい歌。考えてみるとクリープハイプのアルバムはほとんどが別れの歌から始まってる気がするけど、どの曲も全然違う角度や視点から描かれていて面白いんだよな。ひたすら同じ言葉を繰り返すサビは曲の疾走感も合わさって痛々しいほどのキャッチーさがある、これぞクリープハイプ!な一曲。《馬鹿はあたしだな》と自分を責めまくる終盤は正直ホントにイタイ!でもその苦しさが愛おしい…
M2:破花
シングル曲。イントロのツインギターの絡みは何度聴いても独特な魅力を感じる。塾のCM曲だったけどぶっちゃけ受験生応援歌と捉えるにはかなり歪な応援歌だと思う。そもそもこの曲、他人に向けてというよりは尾崎さん自身に向かって歌っているような気がしてならない、というか実際そうなんだろう。「受験生へのメッセージ」と「表現者としての苦悩」という一見噛み合わなさそうな二つの要素をうまく組み合わせた名曲。《疑うことで何か始まる 信じる者は足を掬われる》という歌詞は捻くれているように見えるけど今の混沌とした時代の核心を突いてると思う。
「動き出した君の歴史 いつも今日に答えがあるから」
どんなに苦しくても進むしか無い 表現者としての強い意思表示を感じる曲。
M3:アイニー
「境界のRINNE」のOP。原作を読んで作ったとは言ってたけど厳密に言うと「内容に沿った作品」では無い。簡単に言うと、メタ的な曲。もっと簡単に言うと二次オタの歌。漫画のキャラに恋する人を主人公にして曲書くか普通?でも《あなたと私は次元が違うからきっと分かり合えない》と歌われているにも関わらず次元が違う人=二次元の人に愛を求める友達は結構いるので、彼らには是非この曲を捧げたい。絶対に実らない恋が優しいメロディに乗せて歌われる、切ない名曲。
《いつか超えて会いに来てね待ってる》
最後の歌詞。普通の恋では無いはずなのに凄い純愛性を感じるのは何故だろう…
M4:僕は君の答えになりたいな
初めにタイトルだけ見た時、「back nunber?」と感じた。前作の空気を引き摺った優しげな曲。「問題」とか「足したり引いたり」とか出てきてるからこの曲も塾CMのタイアップ候補だったのかな?強い存在感があるわけでは無いけどサビは妙に耳につく。
《僕は君の答えになりたいな ずっと考えてあげる》
あれ?この歌詞「ずっと考える」のは誰なんだ?「僕」が考えるのか?答えを出すのは「君」だから考えるのは「君」じゃないの?
…君の答えになれるようにずっと僕は君のことを考えてあげるってことなのかな?だとしたら何か凄い健気な曲だな…。
M5:鬼
シングル曲だけどイントロアウトロのファルセットといいどこか官能的な雰囲気といいMVの謎ダンスといい、中々奇抜な怪作。アイニーと違ってこっちはタイアップ先の「内容に合わせた」歌詞になってるのかな?(ドラマ観てない)。歌詞にあるアイデンティティーの崩壊をMVでは「俳優が演技と現実の境を見失う」というやり方で表現しており、上手いな〜と感心。今までに無いような曲だけど、《つかの間の休息 津田沼の六畳間で》って歌詞からはクリープらしい生々しい生活感が出てて好き
続きは次回!