ロックンロール戦線異常あり

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ディスクレビュー:Base Ball Bear「光源」

Base Ball BearからGt.湯浅が脱退」
ファンに限らず、多くのロック好きに衝撃を与えた脱退劇から早一年。スリーピースとなったベボベが満を持してアルバムを発表した。タイトルは「光源」、テーマは「二周目の青春」。前二作で「青春バンド」という肩書にとらわれない自由な音楽性を模索してきた彼らが今、再び「青春」を歌う。果たしてどのような姿を…

うわっ!眩しっ!

こんなキラッキラしたベボベ久しぶりに見た。さえない少年の毎日が「君」によってにわかに色づく様を描いた、「光源」の名に恥じない眩しすぎるラブソング。主人公は間違いなく学生であり、「青春」というテーマに綺麗に沿った作品。

ここ最近のベボベは、「社会への皮肉」や「理不尽への反抗心」といったテーマにVo.小出の独特な言葉遣いで切り込む曲が多かった。だが今作はそんなシニカルな側面は影を潜め、「二度目の青春」をテーマに据えたポップなナンバーが並ぶ。バンド最大の事件を乗り越え、改めて自分たちの原点である「青春」と向き合ったことで生まれた作品といえよう。

とはいえ、ベボベが初期のスタイルに回帰したというわけでもなさそう。何度か聴いて思ったのだが、この作品には「性と死の匂い」がない。初期ベボベの「17才」や「C」には青春のきらびやかさの裏で、大人と子供の中間に位置する少年少女の危うさ、脆さが確かにあった。そうした青春の「影の側面」が今作ではそこまでクローズアップされていない気がする。「二度目の青春」というテーマから初期の生々しさを期待していた人からすると、この作品は少々物足りないかもしれない。

でもそれで良いと思う。もしベボベが初期と同じような青春の曲を作ったところで、それは過去の自分を真似しただけの現実逃避になってしまうからだ。「一度目の青春」と「二度目の青春」を比べてみれば、失われたものはある。でもその一方で、今だから歌えることも確かにあるのだ

自分こそだよ 運命の正体は
「逆バタフライ・エフェクト

明日に帰るため 僕のことを抱きしめてほしい 母のように
寛解

『逆バタフライ・エフェクト』で歌われる運命に毅然と向かい合う姿勢や『寛解』で歌われる圧倒的な母性の存在は、30歳になったベボベが改めて「青春」を俯瞰的に見ることで歌えるものではなかろうか。それは現在進行形の青春を生きる少年少女に向けたメッセージとも取れる一方、今を生きることで精一杯だった過去の自分たちへのメッセージとも取れるかもしれない。

今作は決して過去の焼き写しではない。過去を真摯に受け止めた上で、それでも未来へ向かおうとするBase Ball Bearの新たな挑戦の始まりとなる一作だ。ずっとベボベを追いかけていた人も、あまりベボベを知らない人も、一度手にとって損はない一作。是非。