決まんない
昨年に引き続き2019年に発売された作品の中から個人的に良かった作品を当ブログで発表しようと思い立ち、とりあえず良かった作品をリストアップしたのが数週間前。「まあ今回も5,6作品くらいでまとめようかなぁ」なんて甘い考えはものの10分で打ち砕かれた。あれもこれも良かったと書き出すうちに、到底まとまるはずのない作品数が並べられ「1年ってなっげえな!」と改めて感じた次第。
自己満足の垂れ流しのようなブログなので全部紹介しちゃっても問題ないが、ここは潔く10作品に絞ってランキング形式で発表する。ランキングといえど、書いている時点の気分で選出しているので、もう順不同って言っていいくらいの適当さなのだが。
なにはともあれ、「2019年、私の10枚」。最後まで楽しんでいってください。
第10位 現実みてうたえよバカ/鈴木実貴子ズ
鈴木実貴子ズの歌を「生々しい」とか「リアル」なんて言葉で表すのは容易い。でもそれでいいのかとも思う。日々の憂鬱、行き場のない怒り、自己嫌悪、絶望、ひとつも誤魔化すことなく吐き出す鈴木実貴子の歌は彼女自身の身体の一部であり、血の通った「生の温もり」がある。
真っ暗な闇の中であえぎながら、かすかな希望を必死でつかもうとする不器用な人間の姿が刻み込まれた8曲。
第9位 834.194/サカナクション
前作『sakanaction』から6年。ファンにとっては待ち望んでいた待望の新譜だが、誰よりもこの作品の完成を待っていたのは間違いなくサカナクション自身だろう。アルバムの存在を匂わせながらなかなか形にならないもどかしさ、息苦しさはVo.山口一郎の口から幾度ともなく語られてきた。潜水と浮上を繰り返しながら「自分たちが鳴らしたい音」を模索していたサカナクションの動向は、どこか「迷走」しているようにも見えた。
そんな難産の末に生れた2枚組18曲の大作。「自分たちの鳴らしたい音楽」と「世間が求めるサカナクションの音楽」をどちらも受け入れた本作は、曲調の幅広さを持ちつつアルバムとして綺麗にまとまっている。正直、バンド名を冠した前作以上に「サカナクションらしさ」を感じた。さてさて次作は何年後になることやら、だがロックバンドとしての自らの立ち位置を改めてこのアルバムで示せた今のサカナクションは、たぶん強い。
第8位 Center of the Earth/a flood of circle
この作品については以前レビューを書いているので是非それを読んでいただきたい。
ディスクレビュー:a flood of circle『CENTER OF THE EARTH』 - ロックンロール戦線異常あり
4人になったフラッドが自分たちのロックンロールと改めて向き合い、その答えを世間に叩きつけた痛快な作品。
第7位 Easycome/Easycome
これを書いたころからずっと追いかけ続けていたEasycomeが満を持して発表した1stフルアルバム。
Vo.ちーかまのエバーグリーンな歌声と、スピッツやユーミンに通じるずば抜けたポップセンスはそのままに、「Night Skip」のシンプルだが耳に残るギターリフだったり「雨を待つ」の歌謡曲的なメロディーだったり、その表現の幅はぐっと広がっている。あの手この手で聴き手を引き込んでくる名盤。
第6位 見っけ/スピッツ
フラッドに同じく。この作品についても感想を書いています
ディスクレビュー:スピッツ『見っけ』前編 - ロックンロール戦線異常あり
朝ドラの主題歌を担当しても、紅白には出ず「大晦日はこたつでミカン」を貫いたスピッツ。多くの人を魅了しながらマイペースな崩さない彼らの姿に、今年も目が離せないっ!
第5位 1994/w.o.d.
去年もあちこちのライブハウスに出没し、そのクールなルックスと爆裂サウンドでたくさんの音楽好きを虜にしてきたw.o.d.。そんな彼らのバンド活動の充実っぷりを象徴するような1枚。
爆音のオルタナティブロックサウンドは前作と変らないが、歌われる言葉には繊細な感情の揺れ動きが以前より強く表れてきたような気がする。その極みともいえるバラード「セプテンバーシンガーズ」から、全てを洗い流すような爽快さを持ったラスト曲「1994」への流れは圧巻。
第4位 燦燦/カネコアヤノ
カネコアヤノが作る曲の軸にあるのは、多分「愛」とか「日常」とかシンプルなもの。でも彼女の紡ぐ言葉には、「普通」を一瞬で「特別」にしてしまう…そんな不思議な力があると思う。《Tシャツの襟ぐりと首の境》にドキドキしたり、《視界で揺れる髪の毛先》にときめいたり、何度でも見てきた光景に改めて光を当てることで、何気ない僕らの日々を優しく照らしてくれるような、そんな作品。
第3位 VIVIAN KILLERS/The Birthday
赤と黒のコントラストが映えに映えているジャケットが問答無用でカッコいい。ジャズ、カントリー、パンクと様々な音楽ジャンルをまたぎつつも、4人が音を鳴らせば全てロックンロールに昇華される。重ねてきたキャリアが生む円熟したカッコよさと初期衝動的な破壊力がうまくかみ合った名作。
第2位 WEEKENDER/THIS IS JAPAN
前作まであった「爆音で埋め尽くす」サウンドはかなり抑えめになったものの、音数が減ったことでメンバー1人1人の存在感がググっと増す結果に。特に1曲目の「グルメ」は中毒性の高いギターリフとVo.杉森ジャックの狂気じみた歌い方に惚れ、リリース直後は狂ったように聴いていたし、今もことあるごとに口ずさんでいる気がする。
この作品を出した直後にメジャーデビューを発表、ついでに杉森ジャックは40万のギターを購入。このアルバムを起爆剤に、これからのバンドシーンをめちゃめちゃにかき回してほしいと思う。
第1位 ALL THE LIGHT/GRAPEVINE
アカペラや弾き語りなどこれまでより少しバラエティに富んでいるが、今までのGRAPEVINEとそう大きく変化しているわけではない。でも深く語らずとも素直に「良い…」と思える作品。特にラストを飾る「すべてのありふれた光」の、全てを受け入れる優しさはこれまでGRAPEVINEが紡いできたサウンド、言葉の一つの到達点だと思う。こういう歌が今の時代には必要とされているんじゃないかな、と思うのは筆者の勝手なエゴか、でも何となくそう感じるのだ。
以上、「2019年、私の10枚」でした。今年も書くぞー。