(箱の外観の写真がありませんでした。)
第3回 HUCK FINN
今池駅からふらっと歩いて5分ほど。古めかしいホテル「長楽」の横にぽっかりと空いた入口。中を見ると仄暗い階段が地下へと続いている。
初めて今池HUCK FINNの入り口に立った時、漠然と「うわ、ライブハウスっぽい」と思った。音楽の魅力に飲まれた数寄者共が生み出す独特な空気感が、階段を昇った地上にも漏れ出していたのである。
そんな名古屋でトップクラスに「ライブハウス感」を感じられるライブハウスこと今池HUCK FINNは、1981年創業の老舗。かつては「パンクの聖地」と呼ばれ、名古屋のバンドブームを支えていた重要な場所だったようだ。
フロアはやや縦長、ドリンクカウンターは一番後方にあり、そのすぐ横で物販も行われるため、人の多いライブだと転換の度にその辺りがしっちゃかめっちゃかになる。
そして見どころは壁に貼られた無数のバンドステッカーやポスター。フロアだけでなく階段、チケットカウンター、あげくにはトイレの壁にも貼られたステッカーという名のバンドの爪痕からは、30年という長い年月の中でこの箱がいかに多くのバンドと支え合ってきたかが一瞬で分かる。
初めて見た時衝撃を受けた、倫理感など母親の腹ん中置いてきたといわんばかりの最悪なデザインのステッカー。パンクの聖地と呼ばれた頃とは、箱の雰囲気も流れる音楽も変わっただろうけど、今でもこういうアングラ感がチラチラ見えるのもこの箱の魅力。多分曲は良くないけど。
さて、前述の通り長い歴史を持っている箱だが、かつてはうちの母も出演したことがあったらしい。母曰く、なんでも当時(1990年代初頭)の今池は現在と比べてべらぼうに治安が悪く、HUCK FINNの近くにも「ヤの付く人」が運営している食堂なんかがあったそうで、絶対に女性だけで外を歩くなと念を押されていたとのこと。
もちろん今は全くそんな事なく、飲み屋がひしめく繁華街になっている。さらに最近、「ヤクザの食堂」と正反対の属性を持つ「お洒落な古本屋」が爆誕(本山からの移転)。2階建てとそこそこ大きく、何よりHUCK FINNからめちゃくちゃ近いため、ライブ前の暇つぶしにも困らない、今池最高!HUCK FINN最高!
自分も現在バンドをやっているので、何かのタイミングでこの箱に出られたらと少しだけ思っている。親子2代で同じ箱に出るってなかなかドラマチックじゃないですか。長い歴史の中でライブから生まれたいくつものドラマを見守ってきた、熱く優しい箱だと思う。
ちなみに母がやっていたバンドは本人曰く「暗い曲をやってた」そうです。き…気になる~!