「THE 1975にそっくりと話題になっていたから聴いてみたけど、想像以上にそのまんまで笑ったwもう少し個性がないとw」
某音楽ブロガーがこんなツイートと共に、とあるバンドを紹介していた。前々から鼻につく発言が多いブロガーだが、それにしても失礼な発言だなと思った。
だが、とやかく言う権利はない。自分はTHE 1975のことを、ましてはそのブロガーがパクリ犯とこき下ろしていたTHE LAMBというバンドのことも全く知らなかったのだから。
こういうのはちゃんと自分の耳で判断しなくちゃね
うーん…似てるな。コースアウト寸前の内角ギリギリを攻めている感じだ。だが一方で「こういうシティポップバンド、日本にいくらでもいるよな…?」とも正直思った。
The 1975のポップス色が強いアレンジと比べると、THE LAMBのサウンドは割とシンプルにまとまっている。さらに日本語詞が丁寧に乗せられたメロディ、透明感のある歌声は、どこか1980〜90年代初頭のJ-POPに通じる懐かしさがあり、聴いてて心地良い。現代的なシティポップである一方で、昔親の車で聴かされた大澤誉志幸や久保田利伸が頭に浮かんだ。
あれ…?結構このバンド好きかも…
もっとしっかり調べたいなと思いGoogle先生に尋ねてみると、Spotifyで彼らがPodcastをやっていることを知る。本来自分はApple Music派なのだが、いい機会だし登録することにした。
そのPodcastでは、想像以上にがっつりTHE 1975に触れていた。Vo.ワタナベノボルによれば、問題の「Plastic Girl」が入った最新作では、THE 1975のサウンドフォーマットを借りつつも、日本の歌謡曲の歴史を象徴する「洋楽のジャポナイズ」を強く意識し、かなり自由にやらせてもらったとのこと。自らの曲やTHE 1975、そして音楽カルチャーそのものに対する彼らなりの姿勢が語られていてかなり興味深かった。
結果自分は、「THE LAMBはTHE 1975をパクっているのか?」という問いについて、「似てるけど、だから何?」という答えを出した。
流行に飛びついた出来の悪い模倣ではなく、彼らなりにTHE 1975を解釈し理解した上で音楽をやっていると自分は捉えることにしたのだ。過去に日本のバンドThe Mirrazがアクモン好きを公言し、リフを失敬して物議を醸したことを思い出す。彼らの音楽をパクリと見るか、洋楽のジャポナイズと見るかは各々の自由。個人的には後者の見方をした方が面白いと思うけど…
そして今回の件で改めて、日本語ってずるい言語だよなと感じた。日本語というエッセンスを入れるだけであらゆるものが「日本っぽい」という一種の個性を手に入れてしまうのだから。つくづくずるいと思うし、それが日本の独特な音楽文化を作り上げてきたという点で面白いなとも思う。少なくともTHE LAMBに対しては、日本語詞だからこそ惹かれてしまったという側面もあるわけで、なんというか、日本語の力ってやつを見せられた気がする。
さてさて、実際のところTHE LAMBが今後どうなるかは未知数だ。何かとガラパゴス化しがちな日本の音楽シーンの中で、海外と日本の橋渡しになれるかもしれないし、あるいはパクリバンドとして悪い意味で名を轟かせ続け、そのまま消えていってしまうかもしれない。どちらに傾くかは彼ら次第だろう。
自分はとりあえず応援したい、やっぱりいいバンドだなと思った自分の感性は裏切れないので。そしてこのバンドを「個性がない」の一言で片付けるのはちょっと短絡的かなとも感じたので。
余談だけど、THE 1975のあの日本語訳、どうにかならないもんなんですかね…