今回は、最近いろんなところで少しずつプッシュされ始めている、daisanseiについて書きたい。
2019年夏にVo.安宅伸明を中心に結成され、「居場所のないあなたに添えるポップミュージック」をコンセプトに怒涛の勢いで音源を発表。その集大成として昨年11月に初のアルバム『ドラマのデー』をリリースしたが、これがすこぶるいい。
彼らの曲を聴いて、「くるり」を思い出す人は少なくないと思う。ポップで風通しの良いサウンド、日常の何気ない風景や感情の揺れ動きを綴った歌詞は、『アンテナ』『NIKKI』の頃のくるりを彷彿とさせる。
彼らが凄いのは、サウンドや歌詞だけでなく「ジャンルに縛られない自由な曲風」という、くるりを象徴するスタンスまで踏襲していることだ。1stアルバムの時点でそこまでできるセンスは並大抵のものではない。個人的にはくるりのDNAを正当に受け継いだ、「くるりの息子」みたいなバンドだなと思っている。
そんな彼らの魅力がわかりやすく伝わってくるのは、『ドラマのデー』の1曲目『賛成するとき見える鳥』から2曲目の『ラジオのカセット』への超展開。メインボーカル安宅による弾き語りから、突如ポップなシンセに乗せてBa.フジカケウミによるラップが流れる瞬間は、予備知識なしで聞くと普通にびっくりする。そこからさらにフォークソング調の『北の方から』に繋がるのだから面白い。
最初聞いたときは「なんて掴みどころのないバンドなんだ…」と少し困惑したが、聴けば聴くほどその自由さに引き込まれた。
daisansei - ラジオのカセット(Official Music Video)
それでもアルバム全体にまとまりがあるのは、前述の「居場所のないあなたに添えるポップミュージック」というコンセプトが全くぶれていないからだと思う。土台がしっかりとしているからこそ、その上で多彩な表現の味付けができる。とにかくこのアルバム、聴いてて楽しいのだ。
こういう技って本来もうちょっとキャリアを重ねて辿り着く境地だと思うが、彼らは1stの時点でそれを実現させている。これはもちろん彼らの実力の賜物だが、既にくるりのような素晴らしいお手本がいたことも無関係ではないだろう。いい音楽はこうやって下の世代に受け継がれていくのだ、くるりまだバリバリ現役だけど。
これからどんどんバンドとしての深みが増し、「親」とはまた違った自由さを生み出していくと思う。まだ1stを出したばかりだが、既に次のアルバムがとっても楽しみな、そんなバンドです。