水になれば、というバンドを紹介したい。
Gt.Vo.まーしとBa.Vo.たみおによる男女ツインボーカルバンド。シューゲイザーを基調としたギターサウンドが心地よい。バンド名の通り、ゆらゆらと光を反射する水のような、優しい静けさを纏ったバンドだ。
彼らの曲を聴いた時に感じたのは、2人の歌声の間にある強烈なギャップだ。洗練されているわけではないが、素朴で親しみのある男性ボーカルと、透明感のある美しい女性ボーカル。性別や声質というレベルではなく、住んでいる世界線そのものが違っているような2人の歌声がこのバンドの魅力。例えるなら、四畳半の部屋で歌う男と、彼の夢の中に存在している女性…そんな森見登美彦の青春小説のようなイメージが浮かぶ。
銀杏BOYZの峯田が『駆け抜けて性春』でデュエットしたYUKIのことを、「僕の幻想の象徴」と表現したことを思い出した。
歌声だけを見れば、水になれば、の2人の関係性はかなりこれに近いように思う。峯田とYUKIの声の相性はまさに化学反応ともいえるものだが、あのドキドキ感を常に感じられるバンドだ。
2人の声のギャップが効果的に表れているのが、ミニアルバム『散りばめた文字』のラストを飾る『夕暮れ』。
夕暮れ また今日が終わる さよならだ
2人が同じフレーズを繰り返し歌う曲だが、それぞれのリズムは大きく異なり最後まで2人の歌声が重なることはない。別れを噛み締める気持ちは同じでも、相手とそれを共有することはできないという、曲のテーマである「別離」「忘却」の切なさを強烈に表現しているように感じる。
定期的に新曲を出し、じわじわとその良さが広がってきているバンド。ちなみに2021年1月現在ドラム募集中だそうで、腕に自信のある方はいかがでしょうか…!