このご時世もあってしばらくライブから遠ざかっていると、新しいライブを見つけるアンテナが錆びてしまうようで、フォロワーさんの「チケット譲り先探しています」というツイートを見るまで、このイベントの存在さえ認識していなかった。音楽好きとしてなんと体たらくなことか…と自戒しつつ、そんな自分にライブに行くきっかけをくれたフォロワーさんにはただただ感謝しかない。この場を借りて改めてお礼を言います。本当にありがとうございました。
カメラマン橋本塁が、自らが撮影しているバンドを呼び込み開催しているイベント「SOUND SHOOTER」。16回目となる今回は「弾き語り」「2部制」などコロナ禍の中で様々な工夫をした上での開催となった。冒頭、橋本が前説で「今だからこそできるライブをやろうと思った」と話していたように、コロナだからと萎縮するのではなく、今だからやれることをやろうじゃないかという、全体を通して前向きなエネルギーに溢れたイベントだった。このレポートでは、自分が行った「第1部」の模様をレポートする。
『アナザーモーニング』で幕を開けたthe pillows山中さわおのライブは、いつにも増してゆるゆるな空気。「チケット代(8000円)の内、俺は1000円分くらい、後の分は後輩2人がやってくれるから!」と冗談混じりに後の2人にプレッシャー(?)を与えながらも、歌い始めるとその力強さに一気に引き込まれる。
特にソロ名義で発表された『ヒルビリーはかく語りき』『アインザッツ』の2曲は、時代や社会への怒りや違和感に裏打ちされた「さわお哲学」とも呼べる彼の信念が詰め込まれている。カッコ良さと同時に、辛い現実から決して目を背けないその姿勢に少し胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
最後に歌われたのは『どこにもない世界』。《言葉を超えて語り合えるキミが好きだよ》というフレーズには、「声が出せなくてもちゃんと届いているよ」と包み込んでくれるような優しさがあり、まさに今の時代にダイレクトに響く曲だなと感じた。ロックンロールは時代を映すものでなくてはならないと渋谷陽一も言っていたが、彼はまさにそれを体現している。
2番手はa flood of circleの佐々木亮介。『Cocktail Party Anthem』で賑やかに始まったかと思えば、続く『人工衛星のブルース』を巧みなギターテクと共にしっとりと歌い上げる。その後「名古屋に大好きなバンドがいる」という触れ込みで呼び込んだのは、昨晩から一緒に飲み続けている水野ギイ!革ジャンのゆず(本人談)、爆誕!そのまま2人で演奏された『夢の中ではない』はアコースティックでありながら、正直立ち上がって拳を振り上げたくなるほどの熱量だった。
さらにそこでは終わらず、立て続けに山中さわお(ほろ酔い)を呼び込み昨年リリースしたコラボ曲『I Never Wanna Be Your dog』を披露。これまたBreedersやthat dogなど彼らが敬愛する90'sオルタナへの愛を惜しまず出したアンニュイなサウンドで、先ほどとはまた違ったベクトルで音に酔わせてくれる。今や佐々木亮介は沢山のロックスターが集まってくるサロンのような存在になってるのかもと改めて感じた。ロックンロールの懐の広さを見せつけてくれたライブだった。
トリを飾るのは9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎。はじめての9mmをこんな形で拝めるとは思わなかった。あの激しいサウンドを弾き語りでやるとどうなるんや…と思っていたが、1曲目『ハートに火をつけて』のジャジーなアレンジに完全にやられた。アコギ1本となることで、9mmが持つ歌謡曲的な部分がグッと押し出され、原曲とは別の良さが存分に引き出されていた。
『BIack Market Blues』ではイントロのリフを菅原自身が熱唱。舞台袖で佐々木亮介が楽しそーにしてたので、(どうせなら佐々木が歌えばいいのに…)とチラッと思っていたら、どうやら2部では2人でやったらしい。聴きたかった!!9mmの曲の多彩な魅力を存分に感じることができた大満足のステージ。いつかバンドで聴きたいな。
アンコールは3人全員でthe pillows『この世の果てまで』をセッション。3人の歌声はタイプこそ全然違うけれど、根底にあるロックンロール魂は間違いなく共通している。さわおさんの渾身のギターソロも含め、とんでもなく贅沢な時間だった。
曲が終わっても鳴り止まない拍手の中で、ワンチャンダブルアンコールも…と思ったが、ライブはここで終了。最初に書いたようにライブ、ロックンロール、そして音楽のエネルギーをビシバシと感じることのできたライブ。またいつかそう遠くない未来に今度はバンドで、そしてスタンディングで、彼らのライブを見られたらと思う。