ロックンロール戦線異常あり

好きなものをつらつらと

ディスクレビュー:hotspring『YEARS』

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hotspringは、凄まじく不器用なバンドだと思う。

 

 2010年に浅井健一の主催するレーベルからCDデビューし、大きいフェスにもガンガン出演。ガレージロックシーンの若手のホープとして快進撃を続けていく…はずだった。

そこから彼らの道のりは険しさを増していく。2016年にギターが脱退し、新しいギターが入ったと思えば、Vo.イノクチタカヒロが大怪我をして活動停止。半年後、不死鳥のように蘇るも今度はベースが脱退。どん底から這い上がったかと思えば足を滑らせてまた深みにハマる…そんなバンドの状況に、「今度こそ解散するんじゃねえか…」と思う人は自分含め少なくなかったと思う。

 

しかしhotspringは生き残った、心身にどれだけ傷を増やそうとバンドを止めることはしなかった。何が彼らをここまで突き動かすのか…その答えを示したのが本作『YEARS』だ。

本作はデビューからの11年間に発表された曲を再録したベスト盤のような作品。初めから終わりまで「シンプルなロックンロール」という彼らの基本スタンスが貫かれた名盤だ。

 

hotspringに出会ったのは高校時代の終わりかけか、大学に入ってすぐくらいの頃だったか。たまたまYouTubeで見つけた『ゴールド』の冒頭の歌詞に衝撃を受けた。

《嗚呼、二十歳になったら成人式なんか行かずに 手首掻き切って死んでやる》

20歳を目前に控えた自分は、このフレーズにあっさり心を掴まれた。「ロックンロールの精神とは?」という問いの答えを突きつけられたような、そんな気分だったように思う。結局自分は20歳になっても手首をかっきることはなく、24歳になっても半ば憧れのような気持ちをこの歌詞に抱き続けている。

 


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今回のアルバムを聴いた時、『ゴールド』を初めて聴いた当時と全く変わらないギラギラした輝きと新鮮なドキドキが彼らの、そして僕自身の中に残っていることに強く安心した。僕も彼らも20歳で死ぬことは出来なかった、でもその心の中には今もまだ大人になれない少年が爆音でロックンロールを叫んでいたのだ。

初期の名曲である『45回転』『ダニエルとメロディ』から、バンド内が激動を迎えた中で作られた『黒でいろ』『青春の正体』を経て今作唯一の新曲『Seventeen』に至るまで、大きく音楽性は変わっていない。そこにはただ激情と哀愁を身にまといながら愚直に突っ走る姿だけがあり、ロックンロールへの愛と、バンドに対する執念が痛いほどに伝わってくる。

 

アルバムのラストを飾るのは、11年前のミニアルバムに収録された『いかすぜ今夜』。《これだけが僕の 存在証明だ たった一つの 生きてる証拠だ》と叫ぶ歌声に照れや郷愁はない、それこそが彼らが転がり続けられた理由なんだと思う。

環境が変わり、メンバーも変わり、時代が変わっていく中で、生きる理由だけは変えられなかった、その不器用さがあったからここまで走り続けてきたのだろう。「変わらない」ことは決して良いことばかりではないが、「変わらなくて良い」ものだってある…自分にとってこのアルバムは、そんな思いを呼び起こしてくれる存在となった。

 

たとえどんなに安全な道があっても、彼らはまた無意識のうちにイバラ道を選んでしまうような気がする。そんな不器用な姿に心動かされる僕自身も、まだまだ大人になりきれていないのかもしれない。

でも問題はないのだ。《生まれてきたのはこの瞬間のためだけ そんな夜をずっと探してる》人生の方が絶対にスリリングで楽しいものになるのだから。

 


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