猛省している。
Base Ball Bearにとって実に1年半ぶりとなるツアーが東名阪で開催された。公演数は決して多くないものの、ファンはもちろんバンド自身も待ち望んでいた大切なツアーだ。
しかしあろうことか自分は、そのツアーの存在を名古屋公演前日の夜に初めて知ったのである。当日券に僅かな望みをかけるも当然ながらそんなもんはなく、公演当日は抜け殻のような1日を過ごした。
生ライブを見ることは叶わなかったものの、Base Ball Bearはライブに行けなかった多くの人のために救済策を用意していた。ツアーファイナルの「無観客配信ライブ」である。配信のみのライブをツアーに組み込む…というのは少し新鮮な気がするが、今後はこういったのがスタンダードになっていくのかもしれない。何はともあれ久しぶりに見たBase Ball Bearのライブをレポートする。
人のいない客席、その静寂を吹き飛ばし一足早く夏の訪れを告げるような『BREEEEZE GIRL』でライブは幕を開ける。そのまま『short hair』『GIRL FRIEND』と怒涛の勢いで代表曲を披露。最初からクライマックスと言わんばかりのテンションで、画面越しに見る僕らの心を早々に掴んできた。
3人のグルーヴに酔いしれる『The Cut』に続くのは、昨年リリースされたアルバム収録曲『風来』。その後のMCでは、久々となったツアーの感想が話される。大阪公演が中止になったため東京と愛知のみの少数公演。それでも「久々にツアーができた」実感を噛み締めている3人の姿が感慨深い。
バンドがいつまでも新鮮であるためにどうあるべきか…それは《血のめぐりを固めないためには『同じ姿勢でいないこと』》という『風来』の1フレーズが物語っている。ライブができない中でも、Base Ball Bearは自分たちにできることを探して常に動き回っていた。それを証明するかのように、MC明けに披露された『SYUUU』は結成15年を迎えるバンドの新曲とは思えない、瑞々しい輝きに満ち溢れていた。
配信ライブを見ているときに、ライブハウスのような高揚感を覚えることはあまりない。騒ぐことも飛び跳ねることもせず、至って冷静に見ていることがほとんど。
だがだからこそ見えるものもある。ミュージシャンの「演奏する姿」だ。演出が割り込むことも、場の空気に飲まれることもなく、演奏する姿に素直に感動できる…配信ライブはそういう場だと思う。
今回に関していえば、自分はGt.Vo.小出祐介の手の動きにずっと見入っていた。小出のギターはスリーピースとは思えないくらいによく動く。かつて4人で鳴らしていた音を3人で再構築するにあたって、厚さや迫力をどう残すか考え抜いた末に鍛え上げたであろう、確かなアレンジ力と技術力に終始圧倒されていた。
そんな小出のギターが冴えに冴えまくっていた『changes』『yoakemae』をアグレッシブに演奏したのち、続くMCで新曲『プールサイダー』のリリースを発表。
「pool sider=プールサイドの人」を意味するタイトルは、泳げないことを理由にプールではしゃぐ皆に混ざれなかった、子供時代の小出の苦い思い出から生まれたものだそう。しかしそこから「みんなの中に混じれない」孤独に寄り添うだけでなく、「みんなの中に混ざりたい」という思いを汲んで優しく背中を押してくれるのが今のBase Ball Bearだ。
続く『ドライブ』も2021年リリースの楽曲。繰り返す日常の中で「生きている音」を得ようとする姿を歌っており、曲に込められた「現状を受け止めつつそこから一歩踏み出したい」という前向きな思いが『プールサイダー』と共通している。この思いこそが、今の彼らの表現の軸になっているのだろう。
そんな彼らの「イマ」を見せたあとに放たれたのは、『Stairway generation』。先の2曲で歌われた前向きな意志をさらに加速させるような力強い演奏で、ライブは鮮やかに幕を下ろした。最初から最後まで一切ダレることのない、バンドの勢いを存分に感じられた1時間半。
ここ数年で自分の中のBase Ball Bearの魅力がどんどんアップデートされていることを、今回のライブで確信することができた。だからこそ次は絶対に生で見たい。同じ轍は踏まぬよう、好きなバンドのライブ情報は逐一チェックしなくちゃなぁと思うのでした。
↓今回のライブのセトリをプレイリストにしています!(『プールサイダー』を除く)↓