ロックンロール戦線異常あり

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ディスクレビュー:The Birthday『サンバースト』前編

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今年結成15周年を迎えたThe Birthdayによる2年ぶりの新作『サンバースト』。コロナ禍によりライブができなかった分を制作に費やし、じっくりと組み上げた作品だ。

時間をかけて余計なものを削ぎ落とし、4人のアンサンブルを極限まで突き詰めた結果、今まで以上に風通しが良くなった今作。これまで積み重ねたものを守りつつ、新境地にたどり着いた傑作を全曲レビューという形で紹介する。

 

 

1.12月2日

どことなく1stアルバム『Rollers  Romantics』の頃を彷彿とさせるような、ヒリヒリとした緊張感に包まれた1曲目。

繰り返される『俺は今夜飛ぶことにした』という意味深なサビのフレーズが印象的だ。たとえ『セキセイインコが唄ってる』くらい平和でも、『ドドンパチが始まって』も「今夜飛ぶこと」をやめようとしない、まるで世の中を達観したようなその態度が、何にも縛られないVo.チバユウスケのスタイルを表しているように感じる。

 


2.息もできない

切なげなメロディと、《お前の唇 何かを言おうとしていた 黙って塞いだ 息もできないくらいに》という情熱的なフレーズのギャップに心揺さぶられた。映画でたまに観る、スローモーションで流れるキスシーンが思い浮かぶ。

チバの歌う愛は時々暴力的な一面を見せる時がある。わかりやすい例だとミッシェルの『キラービーチ』、The Birthdayの『ゲリラ』…愛情と隣り合わせの痛みや苦しみを彼は何度も歌にしてきた。『息もできない』もその延長上にあると思うが、その表現は年を重ねてなお、ますます深く濃くなっている。

 


3.月光


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MVもある今作のリードトラック。これまで以上にベースがフィーチャーされており、その官能的な響きが陶酔感をもたらす。そこに乗る切れ味鋭いギターが、混迷に包まれた夜の街を疾走するようなハードボイルドな空気を生み出している。

《無知でいるのは罪か?》《お前の想像力が現実をひっくり返すんだ》とスピーカー越しに語りかけるようなチバの歌声には、矛盾に満ちた現実を打ち破ろうとする確固たる意志を感じる。星の見えない東京の夜を真っ直ぐ射抜く月の光に、時代の淀んだ空気を貫くイメージを重ね合わせたかのような曲だ。

 

 

4.ラドロックのキャデラックさ

力強いドラムビートに乗せてタイトルのフレーズが歌われる、いい意味で男くさい曲。「ラドロック」は「バンドの金でキャデラックを買う悪徳マネージャー」の名前とのこと(「音楽と人」のインタビューより)。チバの詞世界にはよく登場する、「憎めない悪人」だ。

そして「キャデラック」はThe Crashをはじめ多くのミュージシャンがカバーする『Bland New Cadillac』(Vince Taylor)を筆頭に、ロックンロールとは切っても切れない縁のある名車。まるでアクセルを踏み込むかのように、この曲からアルバムの勢いがますます加速していく

 

 

5.レボルバー

「ニューウェイブっぽい感じを目指した」というGt.フジイケンジの言葉通り、うっすら近未来感のあるギターリフが特徴的な疾走感のある1曲。

歌詞がかなり面白い。《言葉と音に縛られて生きるのはもうやめようと思った》という歌詞がミュージシャンの口から飛び出すのは結構衝撃だった。写真や絵の世界にも踏み込んでいるチバにとって「音楽」は表現のひと手段、そこに留まる必要性を感じてないのかもしれない。

その後不意に飛び出す《モモンガになりたい》というフレーズも印象的だ。木から木へと自由自在に飛び移るモモンガの姿に、手段に縛られず自らを表現したいという願いを重ねているのだろうか。

 

前半はここまで、後半もよろしくお願いします。

 

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