祝!BLANKEY JET CITYサブスク解禁!!(今更)
正直なところ、筆者は全くといっていいほど、ブランキーを聴いてこなかった。高校時代にTSUTAYAでレンタルした『ロメオの心臓』があまりハマらなかったこと、同時期にミッシェルガンエレファントに強火で脳を焼かれたこともあり、なかなか手が伸びなかったというのが実情である。
90年代のロックシーンに燦然と輝く存在ながら、なかなかサブスク解禁に至らなかったが、この度ついに配信開始。関係各所へ感謝しつつ、改めてきちんとブランキーというバンドと向き合おうと思い立った。
今回はベスト盤除くフルアルバム8作品についてのほぼ初聴きの印象を書いたレビューとなる。書かれている内容について、一部主観や憶測が含まれている部分もあるが、個人的な感想ということでご容赦いただきたい。
それでは、どうぞ!
1st『Red Guitar and the Truth』
オーディション番組「イカ天」で圧倒的な実力を見せつけた上でのデビューアルバム。パンクの聖地ロンドンでレコーディングをしたものの、メンバー自身は出来に納得しなかったらしい。
確かに後の作品と比べるとバンドサウンドがやや丸っこいというか、小綺麗にまとまっている感じは否めない。ロカビリー色強めな曲調も相まり、古いジャズバーでムーディーに奏でている姿が浮かんで、これはこれで悪くないけど。
本作で特筆すべきはやはりベンジーの歌声。アクが強え!!『Texas』のAメロ、『公園』のサビのクセが強すぎる歌い回し、ひたすらに”がなり声”でゴリ押す『ガードレールに座りながら』。勢いのまま、つんのめるような歌声はパンクロックへの憧れか、あどけなさが抜けない自らの声に対するコンプレックスの表れか。
カッコいいのはもちろんなんだけど、精一杯背伸びをする少年の姿もどこか残っていて、なんだか微笑ましくも感じた。
バンド演奏が比較的オシャレにまとまっている代わりに、ボーカルの歌声が初期衝動を一手に担う独特の仕上がり。バンドとしてはまだまだ未完成ながら、すでに底知れぬ「普通じゃなさ」を感じられる作品となっている。
2nd『BANG!』
前作から1年足らずの2nd。 1曲目『Rain Dog』のイントロが流れた瞬間、バンドがひとつの完成形に達したんだなと直感した。バンドの技術向上はもちろん、周りの環境が整った結果なんだろうが、短期間でこうも変わるものなのか。
小綺麗にまとまっていたサウンドは迫力と鋭さを手に入れ、暴れ馬みたいになっていたベンジーの歌声は、緩急を取り入れることで緊張感はそのままに表現の幅を大きく広げている。
本作で描かれているのは、拗れた自意識と妄想に振り回される少年の姿。おばあちゃんに構ってもらうために死んだフリをしたり、指で作ったピストルをぶっ放したりと、あどけなさが残る一方で、妙に切羽詰まった歌声には、未成熟な心の中に潜む陰鬱な一面が見え隠れしている。
歪んだ妄想が爆発した『★★★★★★★(正式タイトル:人殺しの気持ち)』や、罪悪感と嫌悪感が拗れに拗れた『ディズニーランドへ』など、不安定に揺れる少年の心が、アルバムの中に歪なコントラストを生んでいる。
それでも本作は、「あての無い旅」に胸を膨らませるピュアな想いを歌った『小麦色の斜面』にて爽やかに幕を閉じ、聴き終わる頃には瑞々しい青春小説を読んだような気持ちになる。
揺らぎながらも社会の濁りに染まりきらない少年の姿が、生々しく繊細なタッチで描かれた名盤だ。
3rd『C.B.Jim』
指で作ったピストルをぶっ放し、あてのない旅を空想していた少年は、あっという間に最新型のピストルを見せつけ、無秩序なダンスホールで踊り狂うアウトローになってしまった。
ブランキーの曲の中に幾度も登場する「不良性」が強く押し出された1枚。 1stの雰囲気を引き継ぎつつ、演奏や歌声はより切れ味を増した。行き場のない感情が「妄想」に逃避させたのが前作だとしたら、世間に対する攻撃性に走らせたのが今作。
刹那的な快楽と暴力性に身を委ねても、どこにも辿り着かず、心の中に澱み溜まった感情は、アルバムの最後に置かれた『悪いひとたち』で静かに弾ける。
戦争によってつくられた歴史、欲望によってつくられた社会….今の世界を構成する数多の”理不尽”への怒りと、そこに飲み込まれる自分自身への無力感が、美しいアルペジオに乗せて淡々と歌われる。悲壮な現実に打ちひしがれながらも、やがて生まれる新しい命に微かな希望を見出すようなラストの絶唱が耳にこびりつく。
全体的にオラついているものの、この物悲しくも美しいラストにおいて、ブランキーが「不良バンド」とされつつも多くのロックファンを惹きつける理由がよくわかる1枚。
4th『幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする』
ミニアルバム『METAL MOON』を間に挟んでの4作目。やたらオラついてた3rdとはうって変わって、ネオアコやジャズを取り入れたソフトな雰囲気の中、ややオーバープロデュース気味なサウンドが楽曲を彩る、キャリア全体を見ても結構な異色作。『嘆きの白』のやたらハイテンションなホーンが耳から離れない!
やりすぎだろと感じつつも、作品としては一貫性があって結構好みだけど…当時のファンはこの変化をどう受け止めたんだろう…
柔らかくなったサウンドとは対照的に、ベンジーの詞世界はどこか仄暗く虚無的で、そのコントラストがなかなかクセになる。この空気感は『ハチミツ』辺りまでのスピッツに通じるところもあるかも(『青い花』のリフはかなりスピッツ…)。
サウンドの変化があまりにも大きいので、プロデューサーやレコード会社の意向が強めに反映されてるんだろうな…という邪推は正直ある。メンバーとしても色々思うことがあったのか、次作以降はセルフプロデュースに移行し、本作で見せた音楽性は薄まっていく。
一方でこれまで隠れ気味だったバンドのお洒落な部分、ポップな部分が前面に引き出された本作は、バンドの可能性を大きく広げた側面もあると思う。異色作にして重要作。
前編はここまで。
次回は近日中に更新します。きっと!!
2025/01/13追記
後編を更新しました。