ロックンロール戦線異常あり

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気まま楽曲レビュー フジファブリック『陽炎』

陽炎が揺れてる

フジファブリック、初期の名曲。四季をコンセプトにした4枚のシングルの内、夏をテーマにした曲。少しずつ疾走感を増していく曲調と生活感のあるノスタルジックな歌詞が、夏の爽やかさと湿っぽさを同時に想起させる。サークルのライブで後輩がエモいMCの後にこれを演奏していて、グッときたなぁ…

あの街並 思い出したときに何故だか浮かんだ
英雄気取った 路地裏の僕がぼんやり見えたよ

ふと脳裏をよぎる「あの街並み」の光景、それをきっかけに次々と思い出される「あの頃の僕」の何気ない日々。回想はやがて現実の通り雨と重なり、サビが始まる瞬間一気に自分を現実に引き戻す。その瞬間溢れ出す懐かしさ、そしてもう戻れないという悲しみ、虚無感、様々な感情は複雑に混ざり合い、焦燥感となって「今の僕」を突き動かす。

陽炎が揺れてる

焦燥感の先にある、サビの最後のフレーズ。何気ない言葉だが、とめどない感情の氾濫にある種の区切りをつけるような、美しいフレーズだ。

ここまで割と勝手に自分なりの解釈を書いたが、正直それが正しいかどうかは分からないし、気にしたところでだ。ここではサビの時間軸を「現在」としたが、一方で過去の回想を抜けていないとも考えられる。更に言えば、1番サビと2番サビは時間軸が同じか、それとも…

過去と現在の間は曖昧に揺れ続ける、陽炎のように。