ロックンロール戦線異常あり

好きなものをつらつらと

この時代だからこそ生まれた、ステイホームな音楽映像3選

コロナウイルスのせいで、どうにも身動きの取りづらい状況が続いている。ライブが当たり前のようにできる日はまだまだ遠い。誰も彼も、漠然とした不安を抱えながら生きている時代になっているように思う。

しかし、この時代だからこそ生まれたものもある。思うように活動ができない中で、少しでも自分たちの作品を届けようと、ミュージシャンたちが工夫を凝らして作り上げた映像作品を今回は紹介したい。

 

1.ジュテームアデューベルージャンブルース【acoustic ver.】/a flood of circle

 


【Music Video】ジュテームアデューベルジャンブルース - a flood of circle [acoustic ver.]

 

配信ライブに限らず、既存曲をリモート演奏ver.を上げたり、Vo.佐々木亮介とGt.アオキテツによる派生ユニット「サテツ」でアルバムを出したりと、精力的な活動を続けているフラッドの最新動画。2016年のアルバム収録曲を大胆にアレンジ。原曲はリズミカルなご機嫌ナンバーだが、この動画ではアコースティックver.となり、ノリの良さを引き継ぎつつも優しい応援歌になっている。

正直アルバムで聴いたときは「ノリがいい歌だな〜」程度にしか思っていなかったが、改めて聴くと今の時代にめちゃくちゃ響く曲であったことに気づく。《今も君を思って歌ってる 会いたいな 会いたいんだ》というストレートな言葉は、画面越しのファンへ向けられた、フラッドの真摯な思いと捉えていいと思う。本当に粋なバンドだ…

曲のラスト、《どうか元気でね 会いに行くよ》と優しく歌いかけられた言葉は、先の見えない未来にかすかでも光を当ててくれているような気がする。再びライブハウスで彼らと会えるその日を、今は待ち続けたい。

 

2.LIVE IN LIVE〜IN YOUR HOME〜/Base Ball Bear

 


Base Ball Bear - LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~ M8「ポラリス」(8/7まで期間限定公開)

 

続いては一風変わったライブ映像。各メンバーがリモートで演奏した動画を編集で繋ぎ合わせ、「ライブ映像」として毎週1曲ずつ公開するというもの。

とにかく注目すべきは、ベボベが本格的なスリーピースバンドになったことをひしひしと感じる完成度の高いアレンジ。全8曲中5曲がGt.湯浅が抜ける前、4人体制の頃の曲だったが、3人でも遜色ないようスキのないアレンジが施されている。特に『新呼吸』や『転校生』を3人体制で聴ける日が来るとは思わなかった。

ライブができない日々、ベボベはその時間をひたすら「バンドの成長」に注いでいたんじゃないかと思う。今回のライブ映像を通して、ベボベがスリーピースバンドとしてのひとつの立ち位置を確立したように感じた。

この映像、期間限定公開なので既にみられなくなっている映像もある。このまま幻の映像とするにはあまりにも惜しいのでパッケージ化して欲しいところだが、果たして…

 

3.カーテンコール/THE BOYS&GIRLS

 


『カーテンコール』 松居大悟 監督【 SHINPA 在宅映画制作 #2 】

 

ボイガルの最新作「大切にしたいこと」収録曲のMV。細かく言うと、在宅で映画を作る企画に、松井大悟監督がMVという形で参加した映像作品。ボイガルのファンから募った、外出自粛期間中に家から見た景色の映像で構成されており、今回の騒動がなければ絶対に製作されなかった作品だ。

身近なものである「はずだった」外の映像からは、すぐ近くにあるのに触れられないもどかしさ、寂しさが伝わってくる。そこに優しく寄り添うワタナベシンゴの歌声。MVという枠には収まりきらない、深いメッセージ性を帯びた映像作品となっている。

おそらくこの曲はコロナ禍に入る前には既に作られていたと思う。もっと言えば、ボイガルはいつだって不安や寂しさに寄り添いながら、優しく背中を押してくれる曲を作り続けていた。この作品をきっかけにボイガルの曲が、彼らの曲を必要としている人たちに届いてくれればと思う。

 

今回の騒動で、音楽の聴き方、伝え方の可能性は大きく広がったと思う。でも一方で、ライブだからこそ感じられる「生」の感覚が忘れ去られることは絶対にない。苦しい時期を乗り越え、何倍にもパワーアップした彼らのステージを、今は心待ちにしたい。