前編はこちら
後編もよろしくお願いします。
6.relay
このバンドでこんなクリーンなベースの音聴けたんだ...という新鮮な驚きとともに始まる1曲。
孤独や後悔を抱えながらも、一歩一歩歩いていく姿を描いた切なくも力強い歌詞。そこに前作収録の『SUNNY』を彷彿とさせる、静かなAメロから爆発的なサビへ流れ込んでいく展開が合わさり、エモーショナルな空気が曲全体を包み込んでいる。「春」がテーマになっていることもあり、w.o.d.なりの卒業ソングと言ってもいいかもしれない。
7.踊る阿呆に見る阿呆
人を食ったようなタイトルから放たれる痛快なロックンロール!前曲とは打って変わって電撃のようなベース(マジでどうやって音作りしてるんだ?)から始まる開放的なサウンドは、w.o.d.が次のフェーズに入ったことをはっきりと示している。
フランツ・フェルディナンドを彷彿とさせる、コラージュやアニメーションを盛り込んだサイケデリックなMVも最高。ダンサブルな曲調も相まってどことなくUKポストパンクの空気を感じるが、そこにw.o.d.特製の激ヤバスパイスが加えられオリジナリティ溢れるサウンドに昇華されている。
8.PIEDPIPER
ヒリヒリとしたサウンドに乗せて、内に秘めた怒りを歌い上げた1曲。あえて演奏や歌い方を抑えることで生まれる緊張感が深々と曲の中に根を張っている。
《I'm a PIEDPIPER 脳を揺らす 痛みを抱えたまま》というサビのフレーズは、音だけで自然と僕らを踊らせてくれるw.o.d.のロックンロールを体現したような言葉だ。彼ら自身もまた「ロックンロール」という大きな「PIEDPIPER」に連れて行かれた存在なんだろうけど。
「ロックンロールは僕らを悩んだまま踊らせる」とはこのブログでも何度も取り上げているピートタウンゼントの名言だが、w.o.d.もまさにこの思想に根付いたバンドであることを実感できる1曲。
9.sodalite
爽やかな雰囲気を醸しつつ、どこかセピアな輝きに包まれたノスタルジックな曲。疾走感あふれるサウンドと、もう戻れない「あの頃」に想いを馳せる抒情的な歌詞はサイトウが好きと話していたBUMP OF CHICKENの影響がかなりしっかりと表れているように思う。サウンドは『ハルジオン』や『アルエ』、歌詞は『R.I.P』かな?とか。
曲展開やコード進行はかなりシンプルなんだけど、要所要所に飽きさせない工夫が施されている。特に間奏でギターがオクターブ上がる部分は、曲中の世界が一気に広がるイメージが浮かんできて個人的にツボ。、
10.あらしのよるに
アルバムのラストを締め括るバラードで、w.o.d.としてはおそらく初のアコースティックナンバー。こういう曲を出してくれると、バンドとしての奥行きが一気に広くなったように感じる。サイトウが好きな絵本『あらしのよるに』をモチーフに作ったとのことで、まるで子守唄のような優しい言葉とメロディが、爆音の中で散々はしゃいだ心を静かに癒してくれる。
《寂しさはきっと あなたを思う愛しさだよ》というフレーズは、「ステイホーム」が叫ばれ、孤独が身近になった時代だからこそよりリアルに響く。先の見えない時代の中で懸命に生きる人たちへ向けた、w.o.d.の素直なメッセージが込められている曲だ。
「27クラブ」という言葉がある。27歳で早逝したミュージシャンやアーティストを指した通称であり、w.o.d.のVo.サイトウタクヤも2021年にこの年齢に達する。 『LIFE IS TOO LONG』=「人生は長すぎる」というタイトルもおそらくここから。
だが「お前…死ぬのか!?」と不安を感じる必要はもちろんない。「人生長すぎ!まだまだいくらでもやりたいことできるじゃん!」という威勢のいいメッセージを、このアルバム、そして今のw.o.d.から存分に感じることができるのだから。ありあまるほどの爆音と音楽愛、そして優しさがパッケージングされたこの作品で、w.o.d.はまた一歩「伝説のバンド」に近づいたのだ。