あけましておめでとうございます!
さてさて、毎年恒例のこの企画。
昨年を振り返ると、本格的に洋楽を聴き始めたりレコードを買い漁り始めたり、「聴き方」の面で環境が変わり始めた1年だったように思います。
そんなわけで今回も「2021年リリース」で良かったアルバムをトップ10形式で紹介していきます(ランキングは例によってその時の気分でつけてます)
洋楽を聴き始めたと言った手前、本来は邦洋入り混じるのが理想…なのですが、あいかわらず邦楽に傑作が多かったことや、洋楽は過去の作品中心で最新アルバムになかなか手をつけられなかったこともあり、邦楽のみのランキングとなっています(とはいえ洋楽もいい作品に巡り会えたので、またどこかで紹介したい)。
それではどうぞ!
10.えんぷてい『chorus』
我が地元名古屋の新星。バンドについての詳細な話は上記の記事にて。
個人的には2017年にリリースされた『よふかし』などのキャッチーな歌ものが好きだったため、よりディープな方向に舵を切った本作はそこまで熱心に聴いていなかった。
しかし11月に観に行ったライブで衝撃を受けた。本作収録の『メノウ』や『ことば』が音源以上の煌めきを放って心に流れてくる感触が異常に心地よく、一気に好きなアルバムに早変わり。
ミツメを彷彿とさせるミニマルなサウンドの隙間にギターの残響が優しく入り込み独自の空間を作り出す、彼らの真骨頂を感じられる1枚。
9.ドレスコーズ『バイエル』
アルバムの度に異なるコンセプトを掲げる志磨遼平ことドレスコーズが、「学びと成長」をテーマに作り上げた作品。
最初の時点では曲名すらないピアノインスト集として世に出された本作は、段階的に楽器やボーカル、曲名が追加されその全貌をあらわにするという「学びと成長」を体現したこれまでにない手法でリリースされた。
その様子をリアルタイムで見ていると、メロディーだけだった曲が「意味」を持ち「魂」を宿していく過程を追体験しているようで、普通のアルバムにはない「神秘性」を感じることができた。
一方でそうした話題性を抜きにしても、『はなれている』『しずかなせんそう』など、コロナ禍という特異な状況を反映した曲の数々は、穏やかな演奏の中に強烈なメッセージ性をはらんだ名曲ぞろい。
ラスト『ピーター・アイヴァース』で歌われる音楽への真摯な愛情は、コロナ禍に揺らぐ音楽シーンに優しい光を照らしている。
8.続きはらいせ『続きはらいせⅠ』
最近グッときたバンド 11月号 - ロックンロール戦線異常あり
東京を中心に活動する謎多きバンド、続きはらいせの1stアルバム。彼らについての詳しい話は上記の記事で。
昨年出会った若手バンドの中でひときわ強烈なインパクトを与えてくれた。
ひとたび再生すればファズを効かせた爆音ギターと、中性的で特徴的なコブシを効かせた歌声に彩られた狂乱・郷愁・叙情・退廃が入り混じる世界に恐ろしい勢いで引き摺り込まれる作品。
文学的な感性が暴走したような歌詞も素晴らしく、『夜は友だち、悪魔のかかと』で歌われる《アカシアの花のようなあなたの裸を思い浮かべている》というフレーズは間違いなく今年聴いた曲で1番好きな歌詞。
現在はサブスクのみだが、今年2月にボーナストラック『夕焼けとマザーファッカー』(タイトルがめちゃくちゃ良い)を加え本作のCD化が決定している。今年は東京のアンダーグラウンドをめちゃくちゃにかき回してほしい。
7.クリープハイプ『夜にしがみついて、朝で溶かして』
前作からおよそ3年ぶりとなるアルバム。これまで積み重ねてきたクリープハイプ像と、新たなクリープハイプ像がパズルのように綺麗に組み合わさった1枚。
今作はこれまで以上に「バンドのグルーヴ」に重きを置いているように感じた。Vo.Gt.尾崎世界観は以前「歌詞は良いって言われるけど演奏が褒められない」となにかのインタビューで愚痴っていたが、その葛藤に対するアンサーがシングル『愛す』やリード曲『ナイトオンザプラネット』に結実しているように思う。
前々作収録の『5%』で片鱗を見せたシティポップ的なアプローチをより煮詰めたようなグルーヴィーな演奏は、まさに彼らの新境地。
一方でこれまでのクリープハイプらしい切れ味鋭いロックチューンも健在。
『ポリコ』や『ニガツノナミダ』などに込められた痛烈なメッセージは、初期の多方面に飛び火させるような尖り方とは違う、ピンポイントを狙って繊細に削り上げた針のような刺激がある。紆余曲折を経て、「今のクリープハイプ」を見せつけた名作。
6.THE BOHEMIANS『essential fanfare』
グラムロック直系のスタイルで、独自のロックンロール街道を突き進むTHE BOHEMIANSの前作から約2年ぶりとなる1枚。
The whoを彷彿とさせるド派手なギターストロークではじまるキラーチューン『the legacy』を皮切りに、プロデューサーである山中さわお(the pillows)の影響を感じる『バビロニアの世界地図』や、Vo.平田パンダが敬愛するスピッツさながらの煌びやかなアルペジオが心地いい『図鑑』など、これまで以上に色彩豊かなロックンロールが並ぶ。
時代や世代を飛び越えたさまざまな「ロックンロール」をボヘミアンズテイストに再構築したような非常に中身の濃いアルバム。自他共に認める最高傑作。
5.The Birthday『サンバースト』
ディスクレビュー:The Birthday『サンバースト』前編 - ロックンロール戦線異常あり
詳細なアルバムレビューは上の記事から!
アルバムでは余分なところを削ったソリッドな音作りに徹しているが、いざライブで聴くと相変わらずの爆音で、音源とはまた違った曲の一面が引き出されているように感じた。
またツアー中にリリースしたミニアルバム、『CORE 4』も名盤。終末感すらあるシリアスな空気が漂う『ブラックバードカタルシス』、切なさと優しさが渾然一体となった『ヘッドライト』など、タイトル通り彼らの「核」となる要素が4曲の中にぎゅっと詰め込まれた傑作だった。
4.w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』
ディスクレビュー:w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』前編 - ロックンロール戦線異常あり
詳細なアルバムレビューは上の記事から!
昨年最もたくさんライブを観たバンド。およそ2ヶ月に1回くらいのペースで足を運んでいたが、加速度的にバンドが強靭になっていくのが目に見えてわかった。本作のリードトラック『踊る阿呆に見る阿呆』のイントロで何度ブチ上がったことだろう。
そしてライブのたびに「今ライブができる喜び」を素直に言葉にするVo.Gt.サイトウタクヤの姿を見ると、ライブをやることが彼らにとっての生きる意義なんだろうなと本気で感じる。『LIFE IS TOO LONG』はそんな生命力に溢れた彼らの今を閉じ込めた傑作だ。
3.ビレッジマンズストア『愛とヘイト』
ディスクレビュー:ビレッジマンズストア『愛とヘイト』 - ロックンロール戦線異常あり
詳細はアルバムレビューは上の記事から!
本作で彼らは間違いなく覚醒した。キャッチーなメロディー、けれんみと純情が入り混じる歌詞はそのままに、これまで以上に切れ味鋭いロックンロールが詰め込まれた傑作。
ちなみに今年のライブ初めはビレッジマンズストアに捧げる予定だ。実はまだライブに行ったことがなかったので(水野ギイの弾き語りは1回ある)とっても楽しみ。幸先の良い1年になりそうだ…
2.GRAPEVINE『新しい果実』
2019年版で個人的なベストアルバムだった前作『ALL THE LIGHT』から2年ぶりのリリース。
前作にてプロデューサーを迎え、さまざまなチャレンジを行ったことでいい意味でタガが外れたのか、今作はセルフプロデュースでありながらこれまで以上に大胆なアプローチをかましている。
『ねずみ浄土』や『目覚ましはいつも鳴り止まない』など、ブラックミュージックやシティポップのファンキーなグルーヴ感を取り込んだ音楽性はバンドにとってかつてないほど大きな変化…のはずなのだが、一方で「GRAPEVINEの新作」としてなんの違和感もなく聴けてしまうところに、彼らの軸の屈強さをひしひしと感じた。
また全体的にトリッキーな曲がアルバムを引っ張っているぶん、『居眠り』『さみだれ』といったストレートにメロディの良さで勝負してくる曲の破壊力が凄まじいことになり、アルバムの層を厚くしている。コロナ禍の雰囲気を投影したようなシリアスな詞世界もあいまって傑作だった前作以上に重厚な作品になっている。
1.yonige『三千世界』
ディスクレビュー:yonige『三千世界』 - ロックンロール戦線異常あり
詳細なアルバムレビューは上の記事から!
今年最もその「変化」に驚かされたバンド。2018年にリリースされた『HOUSE』の辺りから少しずつ育ててきたオルタナティヴな感性が、最高の形で花開いた傑作。バンドの路線変更は決して簡単なものではないが、彼女たちの場合は間違いなく成功したと思う。
本作を引っ提げたツアーも観に行ったが、長旅(大阪→岐阜)で疲れている身体に染みる良いライブだった。
『さよならプリズナー』や『アボカド』といった初期のシンプルでアップテンポな曲調も良いが、本作収録の『対岸の彼女』のようなじっくり聞かせる曲でこそ、Vo.Gt.牛丸ありさの落ち着きのある歌声は真価を発揮することを実感した。
以上「2021年、私の10枚」でした。
今年もこのブログは「そろそろバズれ…」と思いながらマイペースに更新していきます。よければぜひ読んでいってください!!
改めまして、今年もよろしくお願いします!
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