さる7月10日、HOLIDAY! RECORDSと心斎橋Pangeaが主催するライブサーキット「COME TOGETHER MARATHON(CTマラソン)」に参加した。ブログでも何度か紹介している関西のインディーロックバンド、そのオールスター祭ともいえるこのイベントだ。今回はこの模様をレポートする。
午前10時、早々にPangeaでリストバンドをもらい、そのまま最初の会場であるANIMAへ。トップバッターはフリージアン。前身バンドであるCOSMOSの頃に数回ライブを見たが、毎度胸を熱くするライブをしてくれる。
最初に演奏されたのはライブハウスへの愛を歌った『遊びにおいでよ』。気軽にライブに行くことが憚られる風潮もある中、様々な思いを抱えて来たあろう人たちを優しく迎え入れるこの曲で、CTマラソンは幕を開ける。
「喜怒哀楽があってこそ人間」と語るマエダカズシのパフォーマンスは、曲に込められた様々な感情を全身で表現しているようで、宮本浩次や甲本ヒロト、そして神戸バンドの先輩黒猫チェルシーの渡辺大知を彷彿とさせる。大胆不敵に振る舞いながらも、あどけなさを残す瞳の輝きが印象的だった。
ラストの『蛍』では、これまでに込めてきた感情を爆発させるようにマエダが叫び、バンドメンバーがそれに全力の演奏で応える。サポートを呼んでいた以前と比べ、4人体制となった今の方が明らかにバンドとしての力が増していた。ひとつの「完成形」にたどり着いた彼らが、これからどう転がっていくのか楽しみだ。
ANIMAを出て関西で働く大学時代の友人と合流、互いの近況を話しつつ昼飯を食べたり楽器屋を除いたり。束の間の大学生気分を味わったのち、友人と別れ再びANIMAへ向かう。
続いてはベルマインツ。1曲目の『2023』は音源ではクラリネットやストリングスなどを大胆に取り入れているが、ライブでは4人編成で演奏。しかし物足りなさはなく、ロックンロール、ソウルミュージック、ボサノヴァなど多彩なジャンルを取り入れたツインギターが曲に彩りを与える。
ベルマインツを見るのは久々だが、メンバー3人の歌声のハーモニーが明らかに成長していた。2人のギターボーカルが代わる代わるメインを担当しつつ、残った1人とベースがそこに絶妙なコーラスを入れる。同じ空気感を持つ3人の歌声が共鳴し合うことで、曲の持つ色はより濃く深くなっていく。
MCではなかなかライブが出来なかった今年前半を振り返り、今回無事に開催できた喜びを噛み締める。そのあとに歌われた『ハイライトシーン』は、夏の訪れを感じさせる爽やかなナンバーであると同時に、先の見えにくい時代にあっても光の差す方へ僕らを連れて行ってくれるような力強さがあった。
そのまま会場に残り、Easycomeへ。最後に彼女たちを見たのは3年前の梅田TRAD。いつにも増して盛り上がる観客を前に「ヒーローになったみたい!」とはしゃいでいたVo.ちーかまの姿が眩しかった。のを覚えている。
久しぶりに見た彼女たちは、相変わらずキラキラとした輝きを放ちながらも、前よりも少し「大人の余裕」を感じた。落ち着いた演奏をバックに、ちーかまの淀みのない歌声がストレートに響いてくる。
ボーカルを支える男勢3人の姿は、さながら荒井由実のバックで演奏するティン・パン・アレイのような佇まい。ボーカルを引き立てるバックバンド的な役割を果たしつつも、それぞれの個性もバンドの中にしっかり溶け込んでいて、この4人でEasycome!という確かな存在感があった。
全体的に定番曲中心のセトリだが、ラストに突如新曲を披露。いつもより少しガツンとくるギターと強気な歌詞に新機軸を感じた。次の音源が楽しみ。
イベントが始まってからANIMAにこもりっきりだったが、ここで遂にPangeaへ。Transit My Youthは先月名古屋でライブを見たばかり。その時物販で「大阪のライブも行きます!」と宣言したのだが、思いのほか早くそれが叶った。
サーキットイベントである以上フロアには初めて彼らを見る人も多かっただろうが、そんなことをものともせず1曲目の『songbird』で早々に場の空気を掌握。最後の最後までその勢いを落とすことはなかった。
Transit My Youthはいつもめちゃくちゃ楽しそうにライブをする。お互いの表情を確認しながら、5人が一丸となってステージを作り、観客にもその楽しさを共有してくれる。「コールアンドレスポンスとかできないぶん、俺たちがめちゃくちゃ楽しみます!」と話すVo.モリノササイの言葉に嘘はない。彼らを見るとバンドの楽しさを改めて感じることができる。
「初心者向け!」とモリノが話した通り、キラーチューンをガンガン畳み掛けてくるセトリ。盛り上がらないわけはなく、本日一番拳を上げたライブになった。
一通り見たいバンドを見たが、最後にもう1組…とBRONZEへ向かう。お目当てはBacon。関西インディーロックシーンの重鎮として、20年近いキャリアを持つベテラン…ということは知っていたが、見にいくのは初めて。
本来はバンドとして出演予定だったが、諸事情でVo.コウドタクヤの弾き語りライブへ変更。直前の変更でありなかなか大変だったはずだが、それを感じさせない和やかな空気でライブは進む。
始めて5ヶ月と語るキーボードの弾き語りも披露、少し拙さを残しつつ、決めるところはバッチリ決めるその姿に、不思議と「Baconらしさ」を感じた。楽しそうな表情の裏に、伊達に20年やっていないぞという雑草魂を見た30分間だった。
イベントはまだまだ続くが、この辺で帰ることに。心斎橋付近のレコ屋に寄り、ミッシェルガンエレファントのレコードと面白そうなオムニバスCDを買って帰った。
ライブハウスに少しずつ以前の活気が戻り始めているとはいえ、まだまだ予断を許さない日々が続く。どうかバンドを愛するたくさんの人が、心身ともに健康で過ごせますように、そう感じた1日だった。