我が地元名古屋が生んだ真紅のロックンロール集団、ビレッジマンズストアが待望のニューアルバム『愛とヘイト』をリリースした。正直、自分は彼らのヘビーリスナーでは無かったのだが、今作で完全に「やられた」。
前作『YOURS』と比べるとバラエティ感はやや抑えめで、全体を通してライブ映えしそうなロックンロールアンセムが並ぶ。しかし1曲1曲には強烈な個性があり、退屈することはない。
喉にエフェクターでも入ってんじゃねえか!?と思うようなVo.水野ギイの歌声の妙を感じられる『御礼参り』。どキャッチーなサビや四つ打ちのリズムなど、2010年代の邦ロックのエッセンスをビレッジ風に調理した『黙らせないで』。彼らの持ち味である渋みを残しつつ、これまで以上に開放感のある曲の数々に、この数年でバンドのレベルが飛躍的に上がったことを実感する。
加えて今作の彼らは非常に「垢抜けた」。例えるなら、田舎から上京したあの娘が大人びた美しさを身に纏って帰ってきた…そんな感じだろうか。(名古屋が田舎と言っているわけではないぞ、念のため。)
その姿は爽やかであると同時に、知らず知らず大人になったことを感づかせるような微かな悲哀が漂う。まさにそんなタイトルとなった先行シングル『アダルト』では、ひとつの恋の終わりを思わせる後悔と切なさが入り混じった物憂げな空気を、疾走感のあるギターが切り裂いていく。
関連して、『Anarchy in the T.A.X』も象徴的。これまたライブで盛り上がりそうなロックチューンだが、テーマは「税金」という抗えない現実を象徴するシステム。いつまでも浮世ぶってはいられないとでも言うような現実の冷たい風が『アダルト』同様吹き付けている。
ギター脱退、新メンバー加入、コロナ、念願のZeppワンマン…前作からの数年間で彼ら自身が対峙してきた現実の優しさと厳しさが、バンドを少し大人にしたのかもしれない。もちろん内に秘めた爆発力は全く枯れていない。むしろ積み重ねた経験は曲に深い奥行きを与え、ロックンロールの切れ味をグッと鋭敏にしている。
アルバムのラストは『LOVE SONG』。最初に聴いた際は、「愛の歌」と名乗っているにも関わらず、何度も《さよならだベイベー》と繰り返す捻くれ加減が彼ららしいな…と感じていた。
しかしインタビューで「コロナでライブが減りファンと対面できない中、何度もさよならを言えることの大事さを知った」という水野ギイの思いを知り、これが紛れもなく「愛の歌」であることを痛感する。そしてこの曲もまた、現実の苦しさを味わったからこそ生まれたのだと。
水野ギイのいぶし銀の歌声とキレのあるギターが相も変わらず冴え渡る中、ロックンロールバンドとしての深みが増し、いよいよ誰にも止められないバンドになってきた貫禄がある。「こんなカッコいいバンドだったっけ!?」という新鮮な驚きを存分に感じられる名盤。名古屋にビレッジマンズストアがいることを、心底誇りに思うよ。