ロックンロール戦線異常あり

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次世代ポストパンクシーンの起爆剤、Mississippi Khaki Hair

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音楽ニュースサイトを巡回していた時、あるバンドの渋いアー写に目を引かれた。

Mississippi Khaki Hair。パンクロックを基調としながら、そこにダンスミュージック、民族音楽、エレクトロなど様々な要素を取り込むことで日本のロックシーンにも少なからず影響を与えてきたUKポストパンクシーン、その血を受け継いだ期待の新星だ。

 


Mississippi Khaki Hair - Gravity

 

彼らが影響を受けたと話すのは、2000年代初頭にフランツ・フェルディナンドらを筆頭に巻き起こったポストパンクリバイバル。昨年リリースされた1stアルバムの収録曲を見ると、『Gravity』に見られるダンサブルなリズムや『Phonecall』の開放的なギターリフなどにその影響が色濃く出ている。

しかしそれだけではない。『Hurts』の武骨なベースから始まるイントロを聴いた時、1970年代にポストパンクシーンの先駆者となったジョイ・ディヴィジョンの『Transmission』を思い出した。シーンの一部を切り取っているのではなく、ポストパンクの歴史を紐解いたうえで、その魅力を改めて世間に叩きつけているように感じた。

Do You Want To

Do You Want To

  • フランツ・フェルディナンド
  • オルタナティブ
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes
Transmission

Transmission

  • ジョイ・ディヴィジョン
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

さてこのバンド、「UKポストパンクの新星」と書いたが、彼らが生まれたのは本場イギリスではない。そこからはるか遠く離れた日本の大阪、メンバーも全員生粋の日本人。

日本のロックは、洋楽を元に日本語特有の言い回しやリズム感によって独自のカルチャーが生み出されてきた節があるが、彼らの場合自らのルーツを無理に日本に寄せることはしていない。その一方で洋楽にかぶれすぎることもなく、先述のポストパンクリバイバルのサウンドからの影響が、日本のロックに通じるキャッチーさに繋がっている。日本語と外国語が入り混じるMVのコメント欄を見ても、彼らが自国の中だけでなく「本場」からも支持を得はじめていることがよくわかる。

 

グローバル化という言葉が叫ばれて久しいが、音楽においてもあるシーンが多様な国籍、人種のアーティストによって盛り上がりを見せることが多くなった。アメリカのインディーロックシーンで、Japanese breakfastやJay somらアジア系アメリカンのアーティストが注目を集めていることがその代表例だろう。

一時期はR&Bなどに遅れをとるも、ここ最近少しずつ復活の兆しを見せているUKロック界隈。その勢いを加速させるのは、案外Mississippi Khaki Hairのような外からの刺激だったりするのかもしれない。彼らが叩きつけたポストパンクの可能性が、出身国日本だけでなく音楽の故郷であるUKのロックシーンにも新しいページを刻むことになれば面白いなと思う。

 

From Nightfall till Dawn

From Nightfall till Dawn

  • Mississippi Khaki Hair
  • ロック
  • ¥2037