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今年もいろんなことがありましたが、個人的に一番大きな変化は「レコードを買い始めた」ことでした。
休日の度に電灯に群がる蛾のごとくレコード屋にふらふらと行く日々。25歳独身というフリーな身を生かし色々買い漁っています。
本記事は自分が買ったレコードの中で面白い!と思ったものを適当に選んで紹介する記事です。よろしくどうぞ!
1.シャムキャッツ×Turntable Films『シャムキャッツ×Turntable Films』
最近レコード屋を覗くときは、シャムキャッツのベスト盤『大塚夏目藤村菅原』が売ってないかを必ず確認している。
2020年の解散時にアナログ限定でリリースし、光の速さで売り切れた逸品。なぜ発売時にいち早く買わなかったのかと言われても仕方ないが、だってこんな入手困難になるなんて思わなかったんだもの。
そんな事情で「し」の棚を漁っていた時に偶然見つけたのがこちらの1枚。シャムキャッツとTurntable Filmsのスプリットシングル。正直こんな作品が出ていることすら知らなかったので、見つけた時はちょっとテンションが上がった。
Turntable Filmsは今作で初めて知ったが、シャムキャッツと同じくUSインディーに影響を受けつつも、よりルーツに接近している印象。一方でどこか懐かしさをはらむエバーグリーンな空気は両者共通している。
収録曲はここでしか聴けない両バンドの新曲と、お互いのカバー。特にカバーの内容は双方かなりガチで、若いながらにミュージシャンとしてのプライドが見え隠れしている。
シャムキャッツは元々英詞だったTurntable Filmsの『Portrait』を大胆に日本語訳し、無邪気さと切なさがより際立つアレンジに。対するTurntable Filmsはシャムキャッツの『BOYS DON‘T CRY』を、原曲の朴訥とした雰囲気を残しつつピアノやピアニカを交え、おしゃれに染めなおす。
リリース時点のキャリアはまだ短いにもかかわらず、自らの強みをわかっているからこそできる良カバーだ。
歌詞カードに描かれてる子がめっちゃいい。
ジャケットの炭酸水よろしく、フレッシュで微かに刺激的な両者の魅力を味わえるスプリット。ライブ会場限定作品でおさめるにはもったいないくらいの傑作。
2.CROCODILES『Endless flowers』
アメリカのインディーロックバンドCROCODILESが、2012年にリリースした3rdアルバム。
Nirvanaの『Nevermind』を彷彿とさせる「丸出しジャケ」だが、こっちの方が大人なぶん全然シャレになってない。
写真の黒いシールは袋の上に貼ってあるだけなので、ビリビリ剥がせばしっかり「ブツ」を拝むことができた(でかい)。サブスクでこれだけ解禁されてないのはやっぱりジャケのせいなのかなぁ。
音楽性は80年代後半のUKロックのリバイバル!といった感じ。The Jesus and Mary Chainあたりのノイジーなギターに彩られた湿っぽいポップサウンドが好きな人ならハマると思う。
今作では前2作と比べアレンジが心なしか少し軽やかに、女性コーラスも起用されアルバム名通り華やかさが増した。B面を再生した瞬間怪しげなスポークンワードが聴こえた時はびっくりしたけど。
ちなみにバンド名は、前回紹介したEcho & the Bunnymen『crocodiles』からとったという説があるみたい。当時隆盛を極めたニューウェーヴ、ドリームポップシーンにとことん愛を捧げているバンドだ。
3.THE BAD BOYS『MEET THE BAD BOYS』
おっビートルズだ、と思って手に取ったら違った
世界中に星の数ほどいる、ビートルズのパロディバンドの中のひと組THE BAD BOYSのデビューアルバム。50年ほど前の作品だが問題なく聴けるので、やっぱりレコードって物持ちがいいんだな…
裏面にはなんと吉田拓郎によるライナーノーツが書かれている。彼らと出会った時の衝撃を綴ったそれは、当時の国内音楽シーンの一部に触れられる資料ともいえ興味深い(ちなみに吉田拓郎は彼らに曲提供をしている)。
収録曲は本家の日本における1stアルバム『ビートルズ!』をそのままなぞっている。パロディバンドにありがちな替え歌や自己流のアレンジは一切なく、完全なコピーに徹しているのが逆に新鮮。そのクオリティは異常に高く、そこまでビートルズを聴き込んでない人なら余裕で騙せるレベル。
吉田拓郎のエッセイによると、『アビィ・ロード』をやってくれと言えばその場で曲順通り演奏できるほどの実力の持ち主らしい。
それなら他の作品もパロディしてほしかったが、残念ながら活動中にリリースされたアルバムはこの一枚だけでバンドとしては短命に終わっている。
というのも、彼ら自身はそこまでビートルズにこだわっておらず、むしろなにかとビートルズを求める周囲の空気に辟易していたようだ(後年のメンバーのブログより)
メンバークレジットもビートルズ色に染められ、彼ら自身の名前はない。これも当時はかなり嫌だったそうな…
ライナーノーツでは吉田拓郎も「好きなようにやれ」とエールを送っているが、結果的にビートルズの呪縛から逃れることは叶わなかった。自らのビートルズ愛が高すぎるあまりに、それに振り回されてされてしまったという、皮肉な運命を背負ったバンドだ。
今回は以上です。
現在毎年恒例「2021年 私の10枚」を準備中です。来年になる可能性高めですが、気長にお待ちくださいませ!