ロックンロール戦線異常あり

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ディスクレビュー:a flood of circle『CENTER OF THE EARTH』

a flood of circleの9thアルバム、『CENTER OF THE EARTH』がリリースされた。Gt.アオキテツが加入し、2枚目の1stアルバムとも呼べる前作を経て現編成で初めて制作したアルバム。これがまあとんでもないロックンロールアルバムだったわけなのです。

今作も今作とてメンバー自ら「最高傑作」と豪語していたアルバムだが、今作はこれまで以上にa flood of circleが持つロックンロールを全面に打ち出した会心の一作だと思う。ロックバンドの酸いも甘いも経験してきたからこそ出せる説得力と破壊力で、あらゆる障壁をぶち壊していくようなカタルシスがとめどなく溢れている。

とにかく勢いが半端じゃない作品だが、それでいて聴いてて飽きがこないのは、このa flood of circleというバンドが、多彩な方法で聴き手にアプローチをかけているからだと思う。「Vampire Kila」で《罪深いのと 勇気がないのは 全然違うぜ とっととやれ》と丸まった背中を蹴っ飛ばしてきたかと思えば、「光の歌」では《ありったけの命で 駆け出せ獣道 派手に転んでも 行こうぜ前へ》と強く手を引っ張ってくれる頼もしさを見せる。さらには《常識などない ダークサイドへようこそ》と怪しい世界へ誘う「美しい悪夢」のような曲まであって、様々なやり方で僕等をロックンロールの沼に引きずり込んでくれる。改めてこのバンドの聴き手に対する強い気持ちにまんまと魅せらてしまった。

もちろんこれまでもカッコいいロックンロールアルバムを届けてくれたfloodだが、今作は特にバンド感…ひとつの塊として転がっている感覚が強い気がする。その背景のひとつに4人目のメンバー、Gt.アオキテツの加入があるのは間違いない。「一貫したスタイルを持ち続けている」とVo.佐々木が評するアオキテツのギターは、間違い無く今のfloodがロックンロールを鳴らす上での支えになっている。さらにVo.佐々木亮介のソロ活動にも触れたい。海外でソロアルバムをRECしたり、大親友ことUSGの田淵とバンドを組んだりと、floodから離れた活動が増えたことに対しては心配の声も少しあったが、こうした活動に意味があったことが今作でしっかり証明されたと俺は思う。ソロで培った音楽性をバンドに持ち込んだこと、そして佐々木が1人のボーカリストとしてfloodを客観的に見る機会を通して、floodの強みを改めて認識できたこと…こうした要素が「バンドに対する自信」となってこのアルバムを傑作たらしめていると思う。とにかく、このアルバムには迷いがない。

そんな傑作のラストを飾るのは、タイトルチューン「Center of the Eearth」。6分越えの長尺でありながら長さを感じさせない軽やかさと強い意志が表れた、ラストにふさわしい名曲。サビの「マトモじゃなくても 大好きだよ」という歌詞が刺さりまくって辛いくらいだが、この言葉はファンに向けられた言葉とも取れるし、決して順風満帆な道のりではなかったバンドに向けての愛情表現にも聞こえる。この曲は今のバンドの状態がはっきり表れているとインタビューで語っていたが、「君がいれば爆笑だぜ」と歌える今のfloodは間違い無く無敵だ。

聴けば聴くほどに、バンドの調子の良さがここまではっきりとアルバムに反映されるとは…と少し驚いてしまう。メジャーデビューして10年目に突入し、中堅といってもいいキャリアだが、「あぁ、このバンドはまだ全然走れるんだな」と確かな安心感を覚えることのできる充実の最高傑作。イキの良さなら全然若手に負けていない、a flood of circleは今もありったけの命で獣道を走り続けている。