ロックンロール戦線異常あり

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ラストソングに思いを馳せる 第1回

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生きとし生けるもの、皆死ぬ、バンドという生き物も然り。

 

バンドが最後にリリースした曲には、他の曲とは違う特別な意味や想いがある。バンドが解散前最後に出した曲に焦点を当て、あれこれ書く新コーナー「ラストソングに思いを馳せる」始めます。第1回はバンドブーム終焉後のロックシーンを爆速で走り続けた伝説のバンドが、旅の果てに生み出した曲。

 

エレクトリックサーカス/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

 


THEE MICHELLE GUN ELEPHANT / エレクトリック・サーカス

 

ミッシェルガンエレファントが解散に至った理由は明確には語られていない。

ただ今からしてみれば、7thアルバム「SABRINA HEAVEN」の時点で彼らの旅が終わる兆候はあったように思う。後期の曲は歌詞メロディともに初期の頃よりずっと重くシリアスになり、精神をすり減らしているような危うさ、緊迫感があった。その状態を維持し続けるのは、どんなにタフなメンタルを持っていても不可能だ。そんな中でミッシェルガンエレファントは、自分たちにできることを最後の最後まで絞り出そうとしていたように思う。

 

その果てに生み出された「エレクトリックサーカス」は、彼らがラストライブを行った2003年10月11日にリリースされた、正真正銘最期の曲。悲壮感と終末観を帯びたまま淡々と進んでいき、これまで彼らの代名詞であった爆発的な勢いや鋭いカッティングギターは鳴りを潜めている。

《俺たちに明日がないってこと 初めからそんなのわかってたよ》

明日がないことをわかっていたからこそ、「その先」を照らすために彼らは魂を燃やし続けた。そんな彼らの最期の曲を例えるなら、全て燃やし尽くした果てに残った、小さな火を宿した燃えかす。最後の最後まで燃え続けた炎は曲の終わりと共に完全に消え、あたりには一面の闇が、真っ暗な夜が訪れる。

 

だがこの曲はこう締められる。《夜になってから花は咲く》と。

 ミッシェルとしての物語は終わったが、そこからまた新しい物語が生まれるのではないかという、小さな希望を残してこの曲は終わる。焼け跡に残った小さな花は、バンドの最期としてはあまりにも切なく、そして美しい終わりだと思う。

 

2009年にギターのアベフトシが急逝し、ミッシェルが再び揃うことは二度となくなってしまった。ただなんとなく、なんとなくだが、例え4人が存命だったとしても再結成はしないんじゃないかと思う。過去は振り返らない、そんな姿があの4人には似合っているから。

 

…それでも願わずにはいられないのが、ファンの罪深いところなんだけどね。 

 

Electric Circus

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  • THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes